豊かな水や気候に恵まれた山形県では、日本酒造りに適した質の高いお米が採れることから、日本酒の産地として知られ、数多くの酒蔵が点在しています。
また、古くからぶどうを栽培している山形県では、良質なぶどうを使用した美味しいワインの名産地としても有名で、日本酒とともに注目を集めています。
この記事では、山形県の日本酒が美味しい理由や山形県でおすすめの酒造を7箇所ご紹介します。
酒蔵見学と一緒に試飲ができる酒蔵もあるので、ぜひ酒蔵巡りをして飲み比べを楽しんでみてください。
山形県内には51もの多くの酒蔵がある
普段飲みから贈り物まで、さまざまな種類の日本酒が造られている山形県には、なんと51箇所もの酒蔵が点在しています。
しかし、酒どころと呼ばれる東北において「県を代表する」といった突出した蔵がないことから、「地域全体が力を合わせながら日本酒の名産地として盛り上げていこう」と、1987年に各蔵が集結して研究や開発を行う「山形県研醸会」を発足しました。
「山形県研醸会」では、県全体で酒造りのレベルアップを目標に掲げ、本来なら秘蔵となる各自蔵オリジナルの技術やノウハウを共有。
各蔵が切磋琢磨しながら互いに学びを深め、知識や技術を共有していくことで個性の幅や酒の品質を高め合った結果、山形県内のたくさんの銘柄が全国新酒鑑評会にて金賞を受賞しています。
山形県の日本酒が注目されている理由とは?
山形県の日本酒が注目されている理由は、日本酒造りに適した気候や質の高いお米が採れること以外にも、さまざまな理由があります。
ここでは、山形県の日本酒が注目されている理由を2つご紹介します。
「山形酒」が国内で初めてGI認定された
山形県は2016年12月に国内で初めてGI認定され、日本酒分野では全国初の栄誉を与えられました。
GI認定では、水や気候風土、日本酒の原料となる米、伝統的な生産方法や生産地の特性、品質に影響を与えているかなどの評価をクリアすることで、産地としてふさわしいことを知的財産として登録し、保護する「地理的表示保護制度」の指定を受けられます。
例えば、ワインでいうと、世界的に有名なボルドーやシャンパン、スコッチなどが挙げられ、それらのブランドを保護するための制度として、現在では100ヵ国を超える国で導入されています。
日本でもごくわずかの限られた地域でのGI認定ではあるものの、国内では初めての認定ということで、山形県の日本酒に大きな注目が集まりました。
山形県は「酒米」の育成にも力を入れている
山形県では、蔵元や農業関係者、行政が三位一体となって取り組み、県オリジナルの酒造好適米の育成にも力を注いでいます。
代表的な酒米として、1995年(平成7年)には第一号のオリジナル酒米となる「出羽燦々」、2005年(平成17年)には「出羽の里」が誕生。
そして2015年(平成27年)には、「山形県産の米100%で世界に誇れる高級日本酒を製造したい」との要望から、山形産酒米代表の「雪女神」が誕生しました。
中でも「出羽燦々」は、山形県だけが栽培しているオリジナル酒米であるにもかかわらず、日本の代表的な酒造好適米の「山田錦」や「五百万石」、「美山錦」に次いで、平成25年度には全国第4位に輝き、今後もさらなる飛躍が期待されています。
山形の日本酒は世界でも認められている
山形県の日本酒は国内のみならず、海外のソムリエが審査するコンクールや世界最大規模のワイン品評会でも好成績を収めています。
2022年にロンドンで開催された「インターナショナルワインチャレンジ(IWC)」では、日本酒部門で出品した山形県の9つの銘柄が金メダルを獲得。
都道府県別の金メダル獲得数は、全国1位になりました。
さらにこの中でも優秀銘柄だけが受賞できる「トロフィー賞」を、大吟醸の部では「出羽桜 大吟醸酒」、スパークリング部門では「米鶴 スパークリング・ロゼ」が獲得するなど、山形県の日本酒は世界でも高い評価を受けています。
山形県は実はワインの名産地でもある
山形の特産物といえば、さくらんぼやりんごが思い浮かぶ方も多いかと思いますが、実は山形はぶどうの生産量も国内トップクラスです。
国内での生産量第1位の「デラウェア」をはじめ、ピオーネやシャインマスカット、安芸クイーンなどさまざまな品種が栽培され、良質なぶどうを原料にした多彩な日本ワインも多く酒造し、ワインの生産量は全国4位となっています。
江戸時代からぶどうの生産を開始した山形県内には多くのワイナリーがあり、ワインの地理的表示「GI指定」を達成したことで、国内外から注目を集めています。
以前までは、甘口タイプのワインが多い傾向にありましたが、最近では辛口タイプの白ワインなども、需要に合わせて酒造。
山梨県や長野県に比べるとワイナリー自体は少ないものの、山形県には良いワインを造るために良いぶどうを栽培するところから始めるといった、素晴らしいワインを造る若手酒造家も多く、こだわりのワイン造りが注目されています。
山形県の有名酒蔵7選!
山形県にあるたくさんの酒蔵の中から、有名酒蔵を7箇所ご紹介します。
酒蔵見学や試飲が楽しめる酒蔵もあるので、飲み比べをしてぜひ、お気に入りの1本を見つけてください。
六歌仙
山形県のほぼ中心に位置する「六歌仙」では、黒伏山から湧き出る水や山形県産の良質なお米を使用するとともに、近代的設備なども取り入れながら、安定した品質のお酒を酒造しています。
代表銘柄には「六歌仙」や「山法師」などがあり、純粋発酵をテーマに良質なお酒を丁寧に造っています。
事前予約すれば無料で酒蔵見学が可能。また、敷地内の販売所では、試飲や六歌仙グッズの販売、定番の日本酒から季節限定のお酒まで、さまざまな商品を販売しています。
仕込み時期の10月~3月までは蔵見学を中止するなど、時期によっては見学できないこともあるので、事前にホームページから予約しておきましょう。
所在地 | 山形県東根市温泉町3-17-7 |
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創業年 | 昭和47年(1972年) |
代表銘柄 | 六歌仙、山法師、花ひかり |
酒蔵見学 | 酒蔵見学可(要予約) |
若乃井酒造
若乃井酒造で造るお酒は、0度~3度に保たれた貯蔵室で長期間低温熟成され、他の日本酒とは一味違った個性のある味わいが楽しめます。
代表銘柄は「若乃井」や「えびす寿」で、2016年に行われた全国燗酒コンテストでは、若乃井が金賞を受賞しました。
山形で育った良質なお米や、硬度が22の超軟水の水を使用して造る日本酒はくせのない味わいで、素材本来が持つ香りや味わいが引き立ちます。
酒蔵見学は電話での事前予約で可能。
若乃井酒造前に隣接する店舗では、熟成コーヒーや朝どれ野菜、酒粕プリンやお漬物など、地どれ食材にこだわった美味しい商品を取り揃えています。
所在地 | 山形県西置賜郡飯豊町中947-3 |
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創業年 | 明治23年(1890年) |
代表銘柄 | えびす寿、若乃井 |
酒蔵見学 | 酒蔵見学可(要予約) |
和田酒造
和田酒造は江戸時代中期に創業し、200年以上にわたって酒造りをしている歴史ある酒造で、山形県のほぼ中心に位置しています。
「地元住民に認められてこそ、本当に美味しい酒造りができる」という信念のもと、若手やベテランの職人が地元のお米を使用して丁寧に美味しい地酒を造っています。
代表銘柄は、おめでたいことから名づけられた「あら玉」や「月山丸」などがあり、鑑評会でもたくさんの賞を受賞しています。
酒蔵見学は時期にもよってお断りしている場合もありますが、基本的には事前予約で可能。試飲も行っています。
所在地 | 山形県西村山郡河北町谷地甲17 |
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創業年 | 寛政9年(1797年) |
代表銘柄 | あら玉、月山丸 |
酒蔵見学 | 酒蔵見学可(要予約) |
朝日川酒造
朝日川酒造は文政5年(1822年)に創業された、長い歴史と伝統ある蔵で、現在でも昔から受け継がれてきた製法で手間暇かけて酒造りをしています。
代表銘柄は、河北町産の特別栽培米である亀の尾や、月山の伏流水を使用した「朝日川」。
職人が一丸となり、純米吟醸や純米酒、本醸造酒、長期熟成酒など、数多くの清酒を造り、全国の鑑評会にて金賞や優等賞を受賞しています。
朝日川酒造は、少人数で運営していることもあり、酒蔵見学は2023年から当面の間中止しています。
所在地 | 山形県西村山郡河北町谷地乙93番地 |
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創業年 | 文政5年(1822年) |
代表銘柄 | 亀の尾、朝日川 |
酒蔵見学 | 2023年から当面の間中止(2023年10月現在) |
朝日町ワイン
朝日町ワインでは、山形県産の高品質のぶどうの良さを最大限に引き出すことにこだわった、ワイン造りを行っています。
朝日町で生産されるワインには、シャルドネやメルロー、デラウェア、マスカットベリーA、ブラッククイーン、カベルネソービニヨンなどのぶどう品種を使用し、最新の酒蔵技術や長い伝統製法を駆使しながら、風味際立つワインを製造しています。
敷地内には、1ヘクタールにわたる自社ぶどう畑が広がり、施設内でびん詰め工程を見学しながら、40種類以上の多彩なワインやブランデーの試飲が楽しめます。
また、施設内ではワインのオリジナルラベルを作成することも可能です。
試飲したワインの中からお気に入りのワインを見つけて、記念に自分だけのオリジナルの1本を作ってみるのもいいでしょう。
所在地 | 山形県朝日町大字大谷字高野1080 |
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創業年 | 1944年(昭和19年) |
代表銘柄 | シャルドネ、メルロー、デラウェア、マスカットベリーA |
酒蔵見学 | 酒蔵見学可 |
天童ワイン
天童ワインは、風土に恵まれた環境で育った完熟ぶどうを使用して造られており、特に甘口ワインが有名です。
香りや果汁が多い山形県産のナイアガラを原料に低温発酵した白ワインは、ぶどう本来のフルーティーな香りや甘さのバランスがよく、国産ワインコンクールでも入賞しています。
ワイナリーは1月~12月(12/31~1/3を除く)まで、事前予約で見学可能。
工場内では、ワイン工程の説明やワインの試飲、ワインの飲み方や利き酒の仕方などのミニ講座を受講できます。
また、施設内の売店では随時、さまざまな種類の天童ワインを販売しています。
所在地 | 山形県天童市大字高擶南99 |
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創業年 | 昭和59年(1984年) |
代表銘柄 | 山形シャルドネ、ナイアガラ、山形メルロー |
酒蔵見学 | 酒蔵見学可(要予約) |
合名会社 佐藤佐治右衛門
明治23年に創業した佐藤佐治右衛門では、山形県産のお米と山形酵母を使用し、昔からの伝承を守り続けながら、こだわりある酒造りをしています。
代表銘柄は、日本民族のルーツ「倭」と日本を代表する花「桜」をとって命名された、「やまと桜」で、全国新酒鑑評会でも金賞を過去2回受賞しています。
酒蔵見学は可能ですが、酒の仕込みを行う11月~3月頃までは工場内に立ち入りできないなど、時期によって作業を見学できないため、事前に確認しておくことをおすすめします。
購入したい日本酒があればその場で購入が可能で、季節限定商品なども取り揃えています。
所在地 | 山形県東田川郡庄内町余目字町255 |
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創業年 | 明治23年(1890年) |
代表銘柄 | やまと桜 |
酒蔵見学 | 酒蔵見学可 |
山形県の酒蔵のお酒を飲み比べできる?
山形県にある色んな酒蔵のお酒を飲み比べするなら、「山形酒のミュージアム」がおすすめです。
山形酒のミュージアムでは、山形県銘酒の魅力を知れるだけでなく、数々の品評会で高い評価を獲得した山形県を代表する日本酒の飲み比べが楽しめます。
敷地内には、山形県の郷土料理を味わえる「湯けむり屋台 つまみ」が併設されており、山形県で有名な「いも煮」などの和食や、多国籍料理も日本酒とともに味わえます。
蔵王温泉内の宿泊施設やバスターミナルでは、山形酒ミュージアムで利用可能な日本酒試飲券を配布しており、1人1日1杯までは無料での試飲が楽しめるサービスも利用可能です。
山形県の個性的な味わいの日本酒を飲み比べて、ぜひ極上の1本を見つけてください。
山形県の酒蔵巡りをしてみよう!
山形県には、古くから創業している歴史ある酒蔵やワイナリーが複数点在しています。
伝統ある蔵内を見学したり、試飲を楽しんだりすることで、お酒の奥深さも学べて日本酒がより美味しく感じられるでしょう。
そこでしか手に入らないワインや、季節限定の日本酒などを取り揃えている酒蔵もあるので、酒蔵巡りを楽しみ、美味しいおつまみや旅の思い出とともに、お気に入りの1本を味わってみてはいかがでしょうか。