日本酒の出汁割りとは?おうちでの作り方のポイントを紹介

日本酒

日本酒と言えば、常温や熱燗、冷酒のように、異なる温度帯でそれぞれの味わいを楽しめるお酒であることがよく知られています。

素材の味そのままに、何も混ぜずにストレートで飲むというイメージが強い方もいらっしゃるかもしれませんが、近年では日本酒と相性の良いフレーバーで割るという飲み方も注目されています。
そのなかでも、今回は日本らしい「出汁」で割った日本酒の飲み方をご紹介します。

基本の割り方やおすすめのアレンジ方法についても紹介しますので、いつもとちょっと違う日本酒を楽しみたい方は、ぜひ参考にしてみて下さい。

日本酒の出汁割りとは?

日本酒の「出汁割り」とは、端的に言えば「日本酒に出汁を加えた飲み物」のことです。

鰹節や昆布などから取った出汁を日本酒に加えるというシンプルな方法ながらも、風味や奥深さが増し、ほっと一息つける味わいが特徴。

忙しい仕事を終えた日の夜や、冬の寒い時期など、身も心も温まりながらゆっくりとお酒を楽しみたい方におすすめです。

具体的な割り方や出汁のバリエーションについては、この記事の後半で紹介します。

出汁割りは「おでん屋さん」からはじまった

日本酒の出汁割りが飲まれるようになったのは、東京都北区赤羽にある「丸健水産」というお店が発祥と言われています。

このお店は、創業から60年以上の歴史を持つおでん屋さんで、看板メニューであるさつま揚げの種類が充実しており、気軽に寄れる立ち飲み屋であることでも人気のお店です。

飲み方としては、カップ酒を半分程度残しておき、そこへ具材の旨味をたっぷりと含んだ出汁を注ぐというスタイルで、日本酒のおいしさを存分に引き立ててくれることから、出汁割りは多くのお酒好きのお客さんから愛されています。

材料が日本酒と出汁のみというシンプルな飲み物のため、手軽に自宅で再現できる点も魅力。まさに、出汁文化のある日本ならではの楽しみ方といえます。

日本酒の出汁割りはなぜ美味しいの?

出汁割りがなぜ美味しいと言われているのか、その理由には人間の「味覚」が関係しています。

人間の舌には「五味」を感じ取ることができる味覚があり、飲食物が持つ「甘味・塩味・酸味・苦味・旨味」の5つの味のバランスによってその味わいを判別します。

日本酒にはもともと塩味以外の4つの成分が含まれているため、塩気のある出汁を加えることで五味の条件が全て揃えられ、完璧な味わいとなるのです。

また、日本酒が植物由来の旨味であるグルタミン酸を含んでいるのに対し、出汁は動物由来のイノシン酸や干し椎茸などから取れるグアニル酸を含んでいることが多いです。異なる旨味同士の相乗効果により、さらに美味しく感じることができることも出汁割りが評価されている理由です。

おうちで日本酒の出汁割りを作るためのポイント

出汁割りの作り方は、日本酒と出汁を用意して混ぜるだけというとてもシンプルな工程なので、専門の器具などは必要なく、自宅でも簡単に作れるのが嬉しいところ。

ここでは、出汁割りをより美味しく飲むための方法を紹介していきます。

純米酒や本醸造酒を選ぶ

出汁割りを作る時は、米と米麹のみを原料とする「純米酒」、味のバランスが良い「本醸造酒」「普通酒」を使用するのがおすすめです。

純米酒の場合、お米の風味がしっかりと立っているので、出汁と良い具合に調和して、お互いの旨味を引き出すことができます。

また本醸造酒や普通酒の場合、温度変化に強く、温かい出汁と合わせても味わいが崩れにくいです。

純米酒や本醸造酒、普通酒はワンカップサイズのお酒としても販売されており、屋台の雰囲気を楽しめるのはもちろん、ふだん日本酒を嗜む習慣がない方でも飲み切りやすいので便利です。

日本酒をあたためておく

五味を構成している旨味や甘味は、温かい方がより強く感じられます。出汁割りの美味しさをより堪能したいなら、温かいものを用意するのがおすすめです。

冷たいままの日本酒に出汁を注ぐと温度が下がってしまうため、日本酒もあらかじめ温めておくと良いでしょう。

日本酒の温度の目安は、40℃~50℃。温めすぎると味や香りが飛んでしまうので、注意が必要です。

人によっては猫舌であったり、ぬるめの方が美味しく感じられたりすることもありますので、いろいろな温度帯を試しながら好みのラインを見つけるのも楽しみ方の一つです。

日本酒と出汁は1:2の割合がおすすめ

日本酒と出汁の準備が整ったら、まずはそれぞれ1:3の割合で合わせてみましょう。

これは、お酒と出汁の両方の良さを活かせる比率ではありますが、食事の席で飲むとなると、やや物足りなさを覚える場合もあるかもしれません。日本酒の風味をより強く感じたい方は、割合を1:2にするのがおすすめです。

ちなみに、出汁割りの元祖と言われる丸健水産では、1:1の比率で飲まれることが多いので、日本酒好きな方やアルコールに強い方は、好みに応じて比率を調整すると良いでしょう。

出汁パックや顆粒出汁を使うと簡単

出汁割りを作る際、おでんや鍋物などの出汁を使うと具材の味も染み込んでいてより美味しく頂けますが、もっと手軽に出汁を用意したいという場合は、出汁パックや顆粒出汁を使いましょう。

電子レンジやケトルで沸かしたお湯と出汁の素を混ぜるだけで、簡単に出汁が作れます。

この時、出汁の味が濃すぎると日本酒と喧嘩してしまうので、薄味に調整しておくのがおすすめ。日本酒に含まれていない塩味を加えることで五味が完成されるため、パッケージなどに記載されている出汁の成分表を確認し、必要に応じて塩味を足すようにしましょう。

日本酒の出汁割りはちょい足しでアレンジするのもアリ

日本酒の出汁割りはそのままでも十分に美味しいですが、ちょっとしたアレンジを加えることでまた違った味わいが楽しめます。代表的なちょい足し食材には、以下のものがあります。

・七味唐辛子
・柚子こしょう
・刻みネギ

七味唐辛子は、出汁割りの発祥元でもある丸健水産でも定番の調味料で、お店ではオリジナルブレンドの唐辛子が使われています。

ピリリとした辛みによって味を引き締めると共に、冬の寒い時期には唐辛子の効果で身体をあたためてくれる優れものです。

柚子こしょうは、出汁割りのマイルドな風味に柚子特有の香りをプラスし、それがアクセントとなってより複雑な味わいを楽しませてくれます。柚子こしょうの「こしょう」とは、西洋料理などに使われるペッパーではなく唐辛子のことなので、辛みが苦手な方は代わりに柚子の皮をすりおろしたものを用意すると良いでしょう。

また刻みネギは、汁物や煮物のような出汁を使った料理との相性が良いことから、出汁割りにもぴったりです。香りづけとしてはもちろん、出汁割りにはない歯応えが加わることで満足感も増すため、ペースを抑えて飲みたい時や食事のシメなどにおすすめです。

日本酒の出汁割りにおすすめの出汁のバリエーション

日本酒にさまざまな分類・銘柄があるように、出汁にもまた種類があります。

それぞれに魅力があり、味わいの違いを楽しむことができますので、いろいろと試しながら自分好みの組み合わせを見つけてみましょう。

おでん出汁

出汁割りが注目されるきっかけになったのがおでん屋さんであることから、日本酒とおでん出汁との相性は抜群です。

自宅でおでんを作る際には日本酒を準備しておき、ぜひ出汁割りを試してみて下さい。

煮込みが必要なおでんを作るのは大変だという方は、コンビニなどで買ってくるのもおすすめ。寒さが身に染みる季節に、外から帰宅してほっこりと温まることができるでしょう。

お鍋の出汁

お鍋は、寄せ鍋やちゃんこ鍋、水炊き、カニ鍋、キムチ鍋、豆乳鍋と出汁のバリエーションが豊富で、さまざまな出汁と一緒に日本酒の出汁割りを楽しめます。

ただし種類が豊富なぶん、お鍋の出汁の種類によっては、日本酒とあわない場合もあるかもしれません。

相性が心配な場合は、まず少量だけで割ってみて、味を確認してみることをおすすめします。
ただし、チーズを使ったお鍋の場合は分離する可能性があるので、避けた方がいいでしょう。

インスタントのお吸い物

あっさりとした味わいで出汁の香りが際立つお吸い物もまた、出汁割りにおすすめの材料です。

出汁パックや顆粒出汁と同様に、インスタントのお吸い物を使えば自宅で簡単に作れます。また、こちらはもともと味が付いているため、塩味を加える必要もありません。

インスタントのお吸い物で出汁割りを作る際は、水分が多いと味が薄まってしまう可能性があるので、お湯の量を気持ち少なめにすると良いでしょう。

そばつゆ

昆布や鰹節の旨味が引き出された香り高いそばつゆも、出汁割りによく合います。

食べ終わった後の、蕎麦湯の代わりに出汁割りで一息つくのも良いでしょう。

添え物として用意することが多い、わさびやネギ、七味唐辛子などの薬味が味に奥行きを与えてくれます。

まとめ

ストレートで飲むイメージが強い日本酒ですが、近年ではその風味を活かした飲み方にも注目が集まるようになり、スパークリングや果実フレーバーなど幅広い飲み方が考案されています。

出汁割りもまた人気のカテゴリーの一つで、出汁のバリエーションの豊富さもあってさまざまな楽しみ方ができます。

知れば知るほど奥深い世界ですので、ぜひこの機会に日本酒の出汁割りを体験してみて下さい。

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