休肝日をつくることには、肝臓を休ませて肝機能の回復を図れるだけではなく、節約やダイエットにつながるなど、さまざまなメリットがあります。
しかし、休肝日の必要性を認識しながらも、毎日の飲酒をやめられない方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、休肝日をつくるメリットや注意点について解説します。また、休肝日を継続するためのコツもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
休肝日ってなに?
厚生労働省による健康情報サイト「e-ヘルスネット」によると、休肝日(きゅうかんび)とは、“肝臓を休ませるために週に1日以上飲酒しない日を設けることを推奨する目的で作られた造語”とされています。
引用元:e-ヘルスネット(厚生労働省)
毎日お酒を飲む習慣があると、アルコールを代謝する働きのある肝臓を酷使することとなり、結果として肝障害を引き起こす危険性もあります。肝臓への負担を抑えて健康を維持するためには、適切なタイミングで休肝日をつくることが大切です。
週1日以上の休肝日は、アルコールの習慣的な摂取に歯止めをかけるとともに、意識的に肝臓を休ませることができるため、積極的に取り入れましょう。
休肝日をつくる8つのメリット
肝臓を休ませるための休肝日には、さまざまなメリットがあります。休肝日を設けることで心と体を健康に保ち、時間とお金を有効に使うこともできるでしょう。ここでは、休肝日がもたらすメリットについて解説します。
アルコール依存症のリスクを軽減できる
アルコールは依存性のある物質です。習慣的な摂取を続けていると、耐性が発生して徐々に摂取量が増加し、アルコール依存症になってしまうリスクが高まります。
アルコール依存症に陥ると、お酒を飲まない日にイライラしたり、眠れなくなったりするほか、時と場所に関係なくお酒を飲みたくてたまらない気持ちを抑えられなくなってしまいます。
また、一度お酒を飲み始めると歯止めがきかなくなり、アルコールを過剰に摂取してしまうことも特徴のひとつです。
アルコール依存症は、習慣的にアルコールを摂取し続けることによって発症します。つまり、アルコール依存症になるリスクを軽減するために有効なのが休肝日です。
生活習慣病を予防する
お酒の飲み過ぎは、さまざまな生活習慣病を発症する引き金となります。飲み過ぎが引き起こすのは、アルコール性肝炎や肝がんといった肝臓の病気だけではありません。
糖尿病や膵炎(すいえん)、心疾患の代表である狭心症や心筋梗塞、さらには脳出血や脳梗塞など、脳の血管に障害が起こる脳血管疾患を引き起こす原因にもなります。
また、過度な飲酒によって中性脂肪の増加や高血圧の状態が続くと、生活習慣病を発症するリスクが一段と高くなってしまうでしょう。
休肝日を設けることは肝臓の病気のみならず、さまざまな病気を引き起こす生活習慣病の予防にもつながります。飲酒は適量を守り、習慣化しないよう意識しましょう。
家族と過ごせる時間が増える
お酒を飲まない休肝日を決めて、その日は家族と一緒に夕食をとりましょう。
たとえば、「日曜日の夕食は家族と一緒にとる」と決め、その日を休肝日にすることで、おのずと家族との会話も増えます。家族が揃いやすい日であれば、日曜日にこだわる必要はありません。
特に、お酒をよく外で飲む方は、家族と一緒に夕食をとる機会が少ないため、コミュニケーションが減ってしまっているのではないでしょうか。
自分の体をいたわる行為が、結果として家族関係も良好にしてくれる可能性があります。休肝日は家族と一緒に過ごし、会話を楽しみましょう。
お金の節約になる
休肝日を設けることで、お金の節約にもつながります。
たとえば、1日の酒代が500円とすると1カ月では15,000円になりますが、週1日の休肝日を設けると13,000円となり、2,000円節約できます。
また、週2日の休肝日を設けた場合は11,000円となり、4,000円もの節約につながります。
さらに、長期的にみれば先述した生活習慣病の予防によって、診察費や薬代などの医療費も削減できる可能性があるため、酒代の節約以上の節約効果があると言えるでしょう。
酒代節約のため、ビールを発泡酒や新ジャンル(第三のビール)に変える方もいますが、それよりも休肝日を増やすほうが、長期的にみてもお金の節約につながります。
ダイエットにつながることも
お酒と相性がよいのは、揚げ物やスナック菓子などの濃い味付けでカロリーが高い食べ物です。
ただでさえ太りやすい食べ物である上に、アルコールの影響で満腹中枢が麻痺することによって、食べ過ぎてしまうことも多々あります。そのため、お酒を飲む方は食事時間が長い傾向があります。
一方で、休肝日の食事では、満腹中枢が正常に機能するため食事時間が短く、食べ過ぎを防げます。
さらに、肝臓はお酒を飲んでいるときにはアルコールの代謝を優先しますが、飲まないときは脂肪の代謝を行うようになります。
このように、休肝日を増やせば増やすほど、適度な食事量が守られるとともに、肝臓の働きによってダイエット効果が期待できるでしょう。
睡眠の質が向上する可能性がある
アルコールを摂取すると、主に以下3つの作用によって睡眠の質が下がってしまいます。
1. 利尿作用
2. 筋弛緩作用
3. 入眠作用
利尿作用によって尿が作られると、睡眠中にトイレに行きたくなり目がさめるほか、体内の水分が奪われることによって喉が渇きやすくなり、睡眠の質が低下します。
筋弛緩作用は、舌の筋肉を緩ませ舌が気道を塞ぐことにより、空気の通り道が狭くなってしまうため、酸素を十分に取り込めず眠りが浅くなりがちです。お酒を飲むと「イビキ」をかきやすくなるのは、この筋弛緩作用が影響しています。
アルコールの入眠作用は、3時間程度しかありません。その後は、アルコールを分解する過程で産生されるアセトアルデヒドの覚醒作用によって、浅い眠りが増えます。
アルコールを摂取しない日、つまり休肝日を設けることで、睡眠の質が向上する可能性があるでしょう。
お酒を飲む以外に充実した時間をつくれる
休肝日を設けることでお金を節約できるとともに、使える時間も増えます。
たとえば、毎日の飲酒時間が1時間だと仮定して、週1日の休肝日を設けた場合は、年間で208時間を生み出すことができます。
倍の週2日を休肝日とすれば、生み出せる時間は416時間です。
また、「明日は休日だから」と深酒をしたせいで翌日もアルコールが抜けず、休日をダラダラと過ごした経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そのダラダラ過ごした無駄な時間も含めると、有効活用できる時間はさらに増えます。
休肝日によって生み出された時間は、資格取得のために勉強したり、本を読んだり、運動したりと有意義に使えますし、新たな趣味を探してみてもよいでしょう。
普段からお酒を飲んでいる方が飲酒をやめると、使える時間が大幅に増える可能性があるため、ぜひ少しずつ休肝日を増やしてみてください。
翌日にむくみを引き起こしにくい
お酒を飲み過ぎた翌朝に鏡で自分の顔を見たら、驚くほど顔がむくんでいた経験はありませんか。
むくみは、飲酒により血液中のアルコール濃度が上昇して血管が膨張し、血管から水分が漏れだすことが原因です。
顔は皮膚が薄いため、むくみが生じやすいと言われています。そのなかでも特に影響を受けるのはまぶたです。まぶたがむくむと、顔全体の印象が変わってしまうことも少なくありません。
顔にむくみが出やすい方は、休肝日を定期的に取り入れるとともに、翌日に大事な予定がある場合はお酒を控えましょう。
休肝日のデメリットとは?
休肝日を設けることは、健康面や経済面などで多くのメリットがあり、基本的にデメリットはありません。しかし、人によっては休肝日をネガティブに捉えてしまうこともあるでしょう。
ここでは、休肝日を設けるデメリットについて解説します。
休肝日ではない日に飲みすぎてしまう
休肝日に飲酒を我慢した分、休肝日あけにはいつもより多く飲んでしまうおそれがあります。
「休肝日あけのお酒は格別だ」という気持ちも理解できますが、それではせっかく休肝日を設けた意味がありません。
また、「明日飲めない分、今日は少し多めに飲もう」と、休肝日の前日に多量のお酒を飲む行為も同様に控えましょう。
休肝日を設けたからといって、休肝日以外は多めに飲んでよいわけではありません。一日の飲酒量をしっかりと決めておくことが大切です。
休肝日にストレスがたまる
毎晩お酒を飲むことが楽しみだった方にとっては、休肝日にストレスを感じてしまうこともあるでしょう。
そこでおすすめしたいのが、休肝日に別の楽しみを作る方法です。食べることが好きな方であれば、休肝日はちょっと贅沢な晩御飯にしたり、食後のデザートを用意したりするのもよいでしょう。
ほかにも、習い事や散歩、ドライブなどを休肝日に楽しむことで、ストレスを感じにくくなります。休肝日の過ごし方を考えておくことが、ストレス対策として有効です。
休肝日は週に何日あればいいの?
では、具体的に休肝日は週に何日つくるのが理想的なのでしょうか。ここでは、休肝日の日数目安と注意点について解説します。
週に3日の休肝日をつくるのが理想
厚生労働省の多目的コホート研究(JPHC研究)では、さまざまな生活習慣と、がんや脳卒中などの病気との関連性を明らかにするための研究を行っており、休肝日と死亡リスクの因果関係も研究対象のひとつです。
多目的コホート研究が行った調査によると、複数の研究検証が必要ではあるものの、3日以上の休肝日があると、総死亡リスクとがんによる死亡リスクの増加が抑制されると報告しています。
また、1週間あたり300~449g(エタノール換算量)を摂取する男性の多量飲酒者では、休肝日ありのグループ(週1日~2日の飲酒)よりも休肝日なしのグループ(週5日~7日の飲酒)のほうが、総死亡リスクが1.5倍になることがわかりました。
以上の調査結果により、死亡リスクを下げるためにも週に3日の休肝日をつくることが理想と言えるでしょう。
休肝日をつくっても飲みすぎには注意が必要!
休肝日を3日つくっても、休肝日ではない日に「たくさん飲みすぎてしまう」という人は注意が必要です。
多目的コホート研究が、1週間あたり450g(エタノール換算量)以上のアルコールを摂取する男性をさらに詳しく調査した結果、休肝日の有無にかかわらず総死亡リスクが高いことが判明しました。
つまり、休肝日を設けたとしても、1週間の総アルコール摂取量を抑えなければ、休肝日の意味がないと言えます。
そのため、休肝日あけはどうしても飲酒量が増えてしまう方は、普段の飲酒量を抑えるよう意識しながらお酒を楽しみましょう。
特に普段から飲酒量が多い方は、休肝日さえ設ければたくさん飲んでもよいと安易に考えず、1週間の飲酒総量を減らしつつ、休肝日を上手に活用する必要があります。
お酒を飲みすぎると肝臓に影響がある?休肝日をつくらないリスクとは?
肝臓が正常な働きを行えるアルコール摂取量の範囲は、個人差はありますが、一般的な男性で1日40gとされています。
この範囲を大きく超えるアルコール量を長期間にわたって摂取した場合、肝臓での中性脂肪の合成が高まり、やがて肝臓に脂肪が蓄えられた状態になるのが脂肪肝です。
さらに、脂肪肝を抱えた状態で飲酒を続けていると、肝臓に繊維が形成されて肝繊維症や肝硬変になるほか、肝細胞が急激に破壊されてアルコール性肝炎になってしまう危険性があります。
気をつけなければならないのは、症状が進行していても自覚症状が出にくい点です。
肝臓は、別名「沈黙の臓器」と呼ばれるほど自覚症状がほとんど出ないため、自覚症状を感じたときには手遅れになるケースも少なくありません。
大切な肝臓を守るためにも、しっかりと休肝日をつくり、飲み過ぎないように心がけましょう。
休肝日を継続させるためのコツを紹介!
ただ漠然と休肝日を設けるだけでは、よほど強い意志がなければ、継続するのは困難でしょう。挫折しないためには、休肝日の過ごし方と、継続につながる取り組みが重要です。
ここでは、休肝日を継続させるおすすめの方法についてご紹介します。
運動をはじめてみる
休肝日のストレス解消に効果的なのが運動です。特に、事務仕事などで勤務時間の大半を座ったまま過ごしている方にとって、適度な運動はストレスの緩和と運動不足解消につながります。
運動が苦手であれば、軽いウォーキングがおすすめです。体を動かすことによって血行がよくなるほか、脳の働きを活性化して健康を維持する効果も期待できます。
仕事終わりに場所を選ばずできるため、休肝日に限定することなく運動を習慣化してもよいでしょう。
飲酒量のアプリをつけてみる
飲酒量のアプリをダウンロードして、アルコール摂取量を管理する方法もあります。
飲んだお酒の種類と量を入力するだけで、週間、月間、年間のアルコール摂取量をグラフ化してくれるアプリもあり、モチベーションアップにつながるでしょう。
お知らせ機能がついているアプリでは、忘れがちな飲酒データを記録するよう促してくれるため、記録のつけ忘れに役立ちます。
ゲーム感覚で気軽に楽しみながらお酒の量をコントロールしたい方は、ぜひ活用してみてください。
集中してできるものを見つける
休肝日は、集中できる趣味に没頭することもおすすめです。趣味に没頭すれば、お酒が飲みたいと考える余裕を脳に与えないため、休肝日を苦痛に感じることもありません。
自宅で見れるドラマや映画を趣味にすると、ついお酒に手が伸びてしまうおそれがあります。そのため、楽器の演奏やプラモデル作りなど、手先や頭を使って没頭できる趣味がおすすめです。
趣味につぎ込む時間が長くなるほど、飲酒から趣味に意識を向けられるでしょう。
アルコール以外においしい飲み物を見つける
休肝日の飲み物で真っ先に思いつくのが、ノンアルコール飲料ではないでしょうか。最近では、ビールに限らずカクテルやサワー、ハイボール、ワイン、日本酒など、多種多様なノンアルコール飲料があります。
現代は、日本国内の企業のみならず、海外企業の商品もネットで気軽に購入できるため、豊富な種類から選べる楽しみもあります。
もちろん、ノンアルコール飲料にこだわらず、自分に合うおいしい飲み物を探してみてもよいでしょう。
休肝日のメリットを理解して、お酒を楽しもう
お酒をたしなむ方のなかには、毎日のお酒を生きがいにしている方もいるでしょう。
しかし、飲み過ぎで健康を害してしまえば、断酒しなければならない状況に陥るおそれがあります。
そうならないためにも、メリットを理解した上でしっかりと休肝日を設けることが大切です。
休肝日を継続していくためのコツは、休肝日をネガティブにとらえず、楽しみながら自分に合うやり方を探ることです。充実した休肝日の過ごし方が見つかれば、今よりもっとお酒を楽しめるでしょう。